蛍草、千鳥舞う　葉室麟2冊組

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蛍草
１６歳の安坂菜々は風早家へ女中奉公にあがります。菜々は風早家の皆に愛され楽しく下働きをするのですが、実は菜々の父・安坂長七郎は同役の轟平九郎と口論となり刀を抜いた罪で切腹、家は取り潰しとなっていたのです。
さて鏑木藩は先君の取り巻きが賂を手にし藩政を混乱させます。この取り巻きが菜々の父の仇轟平九郎です。
一方、市之進もわいろが横行して藩政を狂わせている張本人が轟であると目星をつけますが逆に轟の罠にはまり流刑に追いやられます。この間佐知は労咳で息を引き取る経緯があり、菜々は市之進の2人の子供を野菜売りをして育てるのでした。
　逆転の鍵は菜々の父が集めていた不正を示す証文ですが、これも轟に奪われ焼き捨てられてしまうのでした。菜々に残された手は、殿様の御前試合で父の仇として轟と果し合いを行うこと。かくして轟と菜々の一騎打ちが衆目環視の中始まります。
物語は菜々を中心に動きますが、彼女を取り巻く剣術師範や寺子屋の先生、質屋のおかみやヤクザの親分などの人情を絡めて見事本懐を果たすという痛快時代劇です。

千鳥舞う
福岡藩黒田家の御用絵師衣笠家の弟子で女絵師の里緒は、江戸狩野派の杉岡外記の屏風絵を手伝ったことがきっかけでお互いに心を惹かれ不義を犯してしまします。今でいう不倫です。外記には東京に妻がいたのでした。この時代は不義密通は「切り捨て御免」もまかり通っていた大罪です。このため2人ともそれぞれの師匠から破門され、博多と江戸に別れ別れになってしまいました。当時ではびっくりするような軽いお咎めです。外記は離婚して博多に帰ってくると約束しますが、約束の3年たっても音沙汰がありません。そのころ破門がとけた里緒は、豪商亀屋藤兵衛から「博多八景」の屏風絵を依頼されます。博多の名称である八つの景色を屏風に描くという企画です。里緒はそれぞれの名勝を訪れてその下絵を描くのですが、いずれの場所でも男女の悲恋や嫉妬、親子の情にまつわる物語があり、これを風景画に書き込んで一枚一枚仕上げていく過程が描かれます。